eSIMとは?SIMカードとの違いは?
SIMとは、通信会社との契約情報などを書き込むICチップのことで、現在広く使われているのは、「eSIM」と「SIMカード」の2つです。
eSIMは、スマホ本体にあらかじめチップが埋め込まれたタイプのSIMです。現行のSIMカードは、加入者を識別するための情報がスマホとは別の小型のICカードに記録されているため、スマホで電話やモバイルデータ通信を行うためには、通信会社が契約回線ごとに用意したSIMカードを挿入しなければなりません。

一方、eSIMはチップがはじめからスマホに内蔵されており、加入者を識別するための情報をネット経由で書き換えることが可能です。
したがって、通信会社の店舗へ出向いたり、通信会社からSIMカードが送付されてきたりするのを待つ必要がなく、オンラインで手続きができるというメリットがあります。
総務省も積極的にeSIMを推進している
日本ではまだ新しい言葉として認識されているかもしれませんが、eSIMがすでに一般的になっている国もあります。
欧米を中心に55カ国以上で導入が進み、世界的に見れば2025年にはスマホの出荷台数のうちのほぼ半数がeSIM対応機種になるとの予想もあるほどです。
そのため日本でも、海外渡航者や来日観光客などの利便性を向上させるために、eSIMの利用促進を進めたいとの考えが政府にはあります。
政府が掲げた「2030年には訪日客6,000万人を目指す」という目標の実現には、eSIMの普及が必須ということです。
また、eSIMの普及によって、利用者による通信会社の乗り換えの円滑化・活性化を実現したいという考えもあるようです。
利用料金の引き下げなど、通信業界における寡占状態の解消や競争の活性化に向けた施策が行われていたのをご存じの方も多いでしょう。
詳しくは後述しますが、eSIMには通信会社の乗り換えをしやすくするメリットが多く、業界の活性化に役立つと考えられています。
総務省は、eSIMの普及に向けた考え方や留意事項をまとめた「eSIMサービスの促進に関するガイドライン」を2021年8月10日に策定・公開しました※1。
ガイドラインのなかでは、格安スマホや格安SIMを提供する「MVNO」(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)がeSIMのサービスを提供できるようにするために、携帯キャリアに対して機能開放を要請しています。
要請をうけて、auも2021年8月26日からeSIMに対応を開始しました。同じくKDDI傘下であるUQモバイルも、2021年9月2日から対応を始めたところです。
- ※1 参考
eSIMのメリット
世界的に普及が加速し、総務省も推進しているeSIMには、具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。はじめにeSIMの代表的なメリットを紹介します。


SIMカードのさし替えが不要
eSIMはスマホ本体に最初から組み込まれているため、SIMカードのようにさし替えをする必要がありません。
たとえば、通信会社を乗り換える時、SIMカードを使う場合は、契約後に新しいSIMカードが発行されますが、もしも郵送で送られてくる場合はすぐにさし替えができません。
eSIMならオンラインで通信に必要な情報の書き込みができ、最短即日で利用を開始できます。また、細かい部品を扱う必要がなく、交換する仕組みが不要になることでスマホが小型化できる点もメリットとして挙げられます。

手続きがオンラインで完了する
eSIMはオンライン上で乗り換えなどの手続きができます。店舗で乗り換えを行った時に長時間待たされた経験はないでしょうか。
オンラインで手続きができれば、ショップへ出向く手間や待ち時間などを省略することができます。
さらに、店舗は営業時間が限られている場合や、予約制の店舗では時間が合わない場合があるかもしれません。オンラインなら営業時間外でも都合のよい時間に手続きができるというメリットもあります。
なお、eSIMは機種変更や紛失時に再発行する必要がありますが、UQモバイルの場合、ネットで手続きすると事務手数料がかかりません(店舗で依頼するときは有料です)。

海外でも使いやすい
先ほど、eSIMは海外ですでに広まっていると紹介しました。
現在、海外へ旅行する時は、プリペイド式のSIMカードを購入してSIMフリースマホにさして利用するのが一般的といわれています。
そのため現地に到着してすぐに使おうという考えから、国内の空港やネット通販などで現地対応のSIMカードを先に買って準備する方もいます。
しかし、空港で取り扱っているカードの種類や在庫に限りがあったり、ネット通販では取り寄せに時間がかかったりするなど不備もありました。
eSIMであれば物理的なカードが不要のため、在庫切れのおそれがなく、不慣れな場所で小さな電子部品を扱う必要もありません。
設定さえできれば、海外でのネット利用のハードルが下がることが期待されています。

SIMカードも挿入できる機種であれば、1台で複数回線の使い分けができる(デュアルSIM)
2つのSIMを利用して2つの電話番号(2つの回線)を使用する仕組みを「デュアルSIM」といいます。
デュアルSIM対応スマホのなかには、eSIMとSIMカードの両方を1回線ずつ利用できる機種もあります。
先ほど海外の例を紹介しましたが、普段カードタイプのSIMを使っている方は、海外に行く際にeSIMを利用すれば、新たにスマホを購入せずに済みます。
スマホを仕事とプライベートで使い分けたいものの、2台持ちは避けたいという方にもおススメです。

向井さん
SIMにまつわる手続きがネットだけで済んでしまうeSIMは、時間のない方にはそれだけでも大きなメリットです。
とくにデュアルSIMの機種では、SIMカードとeSIMのいいところ取りができます。
eSIMのデメリット
メリットの多いeSIMですが、現在はまだ普及途中にあるため、いくつかのデメリットがあります。主なデメリットは下記のとおりです。


機種変更の手続きに手間がかかる
eSIMは機種変更の手続きに手間がかかる点が指摘されています。というのも、カードタイプのSIMはカードをさし替えるだけで機種変更が完了する場合が多く、簡単に行えるからです。
一方でeSIMの場合は、必ずオンラインでの手続きが発生します。オンラインでしか手続きができないケースもあり、多くの場合は自分で説明書を読んで必要なものをそろえるなど、自力で機種変更の手続きをしなければなりません。
オンラインでの手続きが困難なユーザーには敷居が高いといえるでしょう。

対応している通信会社が限られている
auは2021年8月26日からeSIMへの対応を開始し、いくつかの通信会社でもサービスが提供されているものの、すべての通信会社がeSIMに対応しているわけではありません。
eSIMを利用する場合は、まず契約を考えている通信会社がeSIMに対応していることを確認する必要があります。

対応している機種が限られている
eSIMは対応している機種が限られている点もデメリットです。
普及が進んでいるとはいえ、カードタイプに比べるとやはり対応機種は少ないのが現状であるといえます。
今後、通信会社のeSIMへの本格参入に合わせ、メーカー側が提供するラインナップもさらに増えてくると予想されます。
eSIMを利用する時は、通信会社とともに機種ごとの対応状況をメーカーや通信会社のホームページなどで確認しましょう。

アクティベーションロックを表示させる端末が別途必要
eSIMは対応している機種が限られている点もデメリットです。
普及が進んでいるとはいえ、カードタイプに比べるとやはり対応機種は少ないのが現状であるといえます。
今後、通信会社のeSIMへの本格参入に合わせ、メーカー側が提供するラインナップもさらに増えてくると予想されます。
eSIMを利用する時は、通信会社とともに機種ごとの対応状況をメーカーや通信会社のホームページなどで確認しましょう。

インターネット回線が別途必要
登録時に使うQRコード®は、別の端末に表示させる以外に、紙に印刷してカメラで読み込む方法もあります。
しかしこの場合でも、eSIMを設定する新しい機種はWiFiなどでネットにつなげておかなければなりません。
もちろんパソコンやプリンターなどのデバイスも整っていないと難しいでしょう。各通信会社のホームページなどで登録手順をよく確認して検討しましょう。

向井さん
一人暮らしをしていて、ネットに接続する方法がスマホしかないような場合は特に注意が必要です。
事前に手順や必要なものを調べておくことが大切ですが、このような準備が必要なこと自体もデメリットの1つでしょう。