中学生にスマホルールは必要なのか?
「令和2年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」※1において中学生(n=1407)の97.4%がインターネットを利用しているとの結果が出ました。さらに67.0%がスマホで利用しているのも明らかになっています。中学生がスマホでインターネットにアクセスするのが普通になりつつあるとも捉えられますが、トラブルが生じる危険性が大きくなることを心配している保護者もいるでしょう。
なかには「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(青少年インターネット環境整備法)」※2をご存じの方もいるかもしれません。“青少年”(18歳に満たない者)の“保護者”(親権を行う者若しくは後見人又はこれらに準ずる者)には、以下のような責務が科されているのです。
(保護者の責務)※2
- 第六条 保護者は、インターネットにおいて青少年有害情報が多く流通していることを認識し、自らの教育方針及び青少年の発達段階に応じ、その保護する青少年について、インターネットの利用の状況を適切に把握するとともに、青少年有害情報フィルタリングソフトウェアの利用その他の方法によりインターネットの利用を適切に管理し、及びその青少年のインターネットを適切に活用する能力の習得の促進に努めるものとする。
- 2 保護者は、携帯電話端末等からのインターネットの利用が不適切に行われた場合には、青少年の売春、犯罪の被害、いじめ等様々な問題が生じることに特に留意するものとする。
保護者の責務を果たすうえでスマホルールを設けることは効果的です。先の内閣府の調査※1では、インターネット利用に関する家庭のルールの有無を尋ねた結果も掲載されています。中学生のお子さんのいる保護者のうち「ルールを決めている」との回答は82.3%でした。
ただし小学生から高校生までの保護者(n=3,481)を対象にすると78.4%にまで下がります。下記のように、学校種が上がるにつれて「ルールを決めていない」との回答が増える傾向があるのです。ルールは必要ですが、お子さんの成長に合わせてルールの変更・緩和が進んでいく実態が伺えます。この理由についても後ほど解説をしていきましょう。

- ※1:参考
- ※2:引用
中学生のスマホ利用による被害や悪影響(スマホを持つデメリット)
中学生のスマホルールを設けるのが効果的なのは、様々なトラブルの回避につながるからといえます。トラブルの代表例を具体的にチェックしておきましょう。
ネット依存・スマホ依存
ネットやスマホを使えば楽しいゲームや動画などが手軽に利用できます。しかし次第に利用がやめられなくなり依存する場合があるのです。勉強が手につかず成績が低下したり、睡眠不足や視力の低下などの健康被害につながったりしかねません。またゲームなどにハマりすぎて過度な課金をする危険もあります。
ネット被害
安全なサイトと有害サイトの区別は中学生には難しいかもしれません。個人情報が抜かれ迷惑メールや不正請求がくる場合があります。ウイルスに感染してスマホが正しく動作しなくなる可能性もあるでしょう。また広く使われていて安全そうに思われるフリマアプリやオークションサイトでも偽物を買わされる被害などが起きています。大人でも細心の注意が必要で、中学生ならばなおさら警戒しなければなりません。
SNS等のトラブル
学校の友達などと気軽につながれてSNSは便利な面もあります。しかし文字によるコミュニケーションは難しく、いじめや犯罪にまで発展したケースは珍しくありません。また何気なく撮ってアップロードした写真が、著作権や肖像権を犯してしまう危険もあるでしょう。もちろんSNSへの依存も警戒しなければなりません。
見知らぬ人との出会い
ネットでは知らない人と簡単に出会えます。会ってもいない人に自分の情報を伝えすぎると、身元がバレたり弱みを握られたりして犯罪につながるかもしれません。年齢や身分などを偽った「なりすまし」もあるため、ネットで知り合った人を簡単に信用しないようにお子さんに注意喚起をする必要があるでしょう。
中学生のスマホルールを作るときのポイント
危険を回避するためにスマホルールを設けようと思われた方も多いのではないでしょうか。ルールを作るときのポイントをまとめてみます。家庭ごとで事情が違う点も考慮しつつ、参考にしながら親子でルール作りをしてみましょう。

ルールの必要性を伝える
ルールの必要性をお子さんに伝えるのが重要です。先述したような危険回避の重要性をしっかりお子さんに伝えましょう。中学生はまだまだ経験不足な面が多いです。成長がゆっくりで警戒心が薄いお子さんにはとくに丁寧に説明をしてあげましょう。
また精神年齢が高く自立しているように見えるお子さんにも注意は必要です。当人の認識の甘さなどがあるかもしれません。ただし自立心が出てきて保護者から指示されるのを良く思わないお子さんも出てくる頃です。ルールを設けつつも自由を認める姿勢を示し、お子さんの自尊心を尊重してあげましょう。
子どもの話しを聞く・子どもと話し合って決める
お子さんの話しを聞くのは重要です。先にお子さんの話を聞いてから、保護者でルールの雛形や基本方針を定めると情報の整理がスムーズにおこなえるでしょう。お子さんの意見をもとにスマホを持つ目的や理由を明確にすると、お互いの意思確認がしやすくなるはずです。最後に改めて話しあってお互いの合意のもとで適用するとお子さんも尊重できるでしょう。とくにお子さんと一緒に作れば、守れなかったときに保護者の責任にされるのを防げるメリットもあります。
なかには金銭的・犯罪的な問題を起こさないかぎりは自由にさせるご家庭もあるでしょう。精神年齢が高く自立したお子さんの場合は当てはまるかもしれません。ただし万が一にでもトラブルになったときにお子さんが保護者に相談しやすい雰囲気・関係性を作る努力は保護者側に求められます。それこそスマホを活用した親子間のコミュニケーションを日頃から図るのが得策かもしれません。
また祖父母などご夫婦以外にも保護者がいる場合は、保護者全員でルールを話し合うのをおすすめします。とくにルールを細かく設定するときは重要です。保護者ごとで言うことが違うとお子さんも困ります。全員が同じルールを共有しておけば、お子さんも守りやすく、自由に使わせてくれる保護者に頼ってルールの変更や緩和を求めてくるケースも防げるでしょう。
ルールを守れなかった(破った際)のペナルティを決める
ルールとセットで、ペナルティも考えておきましょう。“1日没収”や“成績が上がるまで利用時間の制限を減らす”など、あらゆるペナルティが考えられます。友達との関係性や非常連絡などのメリットを損ねないように、親子で話し合って決めるのが良いでしょう。
なかには解約まで考えておくのが有効な場合もあります。スマホに依存してしまって、健康面まで悪影響が出た場合はスマホをお子さんから物理的に離すのが大事です。最初からルールにしていなくても、お子さんの利用状況を見ながら改訂していくのが良いでしょう。
保護者もルールを守る
保護者の多くがスマホを使っていると考えていいでしょう。お子さんにはルールを設けておきながら、保護者は気にせず使っていたりしないでしょうか。お子さんのルールと一緒に、保護者のルールも考えて設けてみるのをおすすめします。家族みんなでルールを守っていると、“自分だけ”と不満に思うお子さんもいなくなるはずです。
スマホルールの見直しも定期的におこないましょう
ペナルティの箇所で軽く説明しましたが、ルールの見直しも定期的におこないましょう。進級・進学などの成長のペースに合わせて検討するのがおすすめです。先の内閣府の調査※1でも、学校種が上がるにつれてルールの緩和傾向が見られました。ほかにも転校・部活動・習い事・オンライン授業など日常生活において何か変化があれば見直すタイミングかもしれません。学校や他の保護者同士で情報交換をおこないながら、利用について考えてもいいでしょう。